3 歴史と文化に根ざした価値基準に基づいた川口市自治基本条例を

それでは、大きな3の質問に移ります。

一般質問稲川先生似顔絵

 今、全国の自治体で自治基本条例制定の動きが見られる。この条例の一番の特徴は、1つのひな型の水平展開が全国的になされていることと感じています。幾つかの自治体の条例を私は調査・分析をした結果、次のような共通性を発見した。1つ、最高規範性を持たせていること。2つ、直接民主主義を目指していること。3つ、直接民主主義の結果として議会の機能が軽く扱われていること。4つ、市民の定義が地方自治法に規定する日本国民たる住民の枠を超え、自治体に出入りする国籍、年齢を問わない個人、団体を対象にしていること。5つ、住民投票の規定を設けていること。
 我が国の統治原理は間接民主主義であり、もし条例が制定された場合、特定の市民の意向を反映した偏りのある市政への道を招き、さらには国家の統治にかかわる諸問題、憲法改正、無防備都市宣言、外国人参政権問題、夫婦別姓などに強力な道具として使われるような自治体の条例があることを危惧している学識・知識経験者も多い。
 私は自治基本条例が一切必要がないとは考えてはないが、時期尚早であるとの意見がある。子育て支援、長寿支援、障害福祉、インフラ整備、教育問題などをもっと強力に推進してほしいと多くの一般市民、仕事や家事の関係で川口市自治基本条例策定委員会に公募が不可能な方の声もあります。将来少なくても10年先の道州制を見据え、憲法第93条第2項に規定された、二元代表制を踏まえた自主自立の新たな自治体運営の基本的枠組みの制定こそ目指すものであるとの観点より、先月29日に開催された自治基本条例議員研修会の資料である自治治基本条例素々案、たたき台で気になる点を順次確認させていただきます。

 (1) 総則について

 質問ア 条例の位置付けについて
 「市が定める最高規範であり、ほかの条例、規則などの制定改廃、解釈及び運営にあたっては、この条例の趣旨を尊重」とありますが、1点目として、自治基本条例と矛盾する個別条例は制定できないので、過去に制定された条例の洗い直しが必要になると感じるがいかがか。
 2点目として、最高規範とは憲法を意味しており、それ以外の法令を最高規範と称するのは、誤解を招くのではと危惧するがいかがか。
 質問イ 定義について
 「市民とは市内に在住、在勤もしくは在学、または市内で活動する人」とありますが、地方自治法第10条には「住民は、法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の役務の提供をひとしく受ける権利を有し、その負担を分任する義務を負う。」と定めています。住民と住民以外では法的な権利、義務や受益、負担の関係が全く異なるので、これを一括して市民とすることは、法の趣旨と異なるのではとある市民の声ですがいかがか。
 中央大学の佐々木信夫教授は、地方分権の3原則は自己決定、自己責任、自己負担であるとし、市の意思決定においても、責任と負担を負う立場にある住民に優先して参画する権利があると明言されています。

 (2) 市民について

 質問ア 市民の権利について
 「市民は、多様な価値観を持ち、幸せに暮らすことができる権利」とありますが、今学校では理不尽な要求をする父母がいると聞く。例えば「子どもがしっかりとはしを持つことができるよう、先生、しっかり指導してくださいよ」、または「義務教育で学校にやっているのに、なぜ給食費を納めなくてはいけないんですか」など、その次元で市民が幸せに暮らすことができないでいると、市に対してその実現を請求した場合、市はこの権利保障ができるのでしょうか。
 質問イ 市民参加について
 「市は、政策の立案、実施、評価等において、市民の参加を進め、市民の意見が適切に反映されるように努め」とありますが、市民の意見を集約する適切なシステムがないままに市民参加を進めると、特定の限られた意見があたかも市民の意見であるかのように扱われるのではと危惧する声もある。例えば何らかのテーマを検討するために、市民委員会委員を公募した場合、仕事や家庭の事情などからだれもが参加できないはずです。若年層、働き盛り、女性などの意見の反映はできるのでしょうか。
 質問ウ 住民投票について
 説明文の中にある常設型条例、また個別型条例とするのか、発議要件を記述するのかなどは慎重に検討するとありますが、自治体の規模によっても異なるが、今までの他市の例ですと、住民投票には数千万円から数億円の血税を投入しなくてはならないので、安易に行われるべきではないと考えている市民がいます。
 そこで提案いたしますが、私は住民投票制度を設ける場合は、少なくても次の条件とすべきであると思うがいかがか。
 1つ、議会がチェックし、その都度条例を定める個別型条例とすること。2つ、発議及び投票資格は、市長及び議員の選挙権を有するものとすること。3つ、対象を川口市の権限に属するものに限定すること。

 (3) コンプライアンス・倫理について

 「市は市政オンブズマンを置く」とありますが、憲法前文の冒頭の一節は「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」と述べており、議会制民主主義、間接民主主義が我が国の統治原理であることを明確にしています。
地方においては、二元代表制が定められており、これを基本とした自治が行われなければならない。この観点から考えれば、市長や議員の権限を制約したり、市民の権限を過大にするのはいかがか。説明文の中で「権力が濫用されていないか監視」とあるが、市長と議員が切磋琢磨することにより、互いをチェックし合うことが二元代表制のレベルアップにつながると確信しています。市民は、正当に選挙された市長及び議会における代表者を通じて行動することを基本とするのが最高規範、日本国憲法で明確にしている二元代表制です。

 (4) 条例の運用について

 改正手続について提案させていただきます。
 説明文の中で、この条例の最高規範性をかんがみ、条例の改廃が簡単にできるようなことがあってはいけないとありますが、我が日本国を除き、先進国のほとんどが憲法改正を実施しています。また、スポーツの世界でも、ルール改正はその時代に応じて改正されています。自治基本条例のような基本ルールを定める条例ですから、一定期間経過後に見直すことを条例に規定したほうが現実的であると提案するがいかがか。
 以上で1回目の質問を終わります。
一般質問答弁用

◎村川勝司企画財政部長 順次御答弁申し上げます。

 大きな3の(1)のア 条例の位置付けについての1点目ですが、御案内のとおり、自治基本条例につきましては、編集委員会において素素案を作成する作業を鋭意進めているところであります。
 また、さきの議員研修会では、そのたたき台をお示しいたしましたが、引き続き素素案に向けて委員会において検討が重ねられている状況でありますので、あらかじめ御理解を賜りたいと存じます。
 さて御質問の1点目の条例の位置付けにつきましては、編集委員会において本市の最高規範として位置付けることがおおむね了承されているところであります。しかしながら、地方自治法では、条例間に優劣はないものとされておりますことから、解釈や運用の中で最高規範性を確保していくことが一般的となっております。したがいまして、本市における自治基本条例におきましても、精神的な最高規範性を有するものと理解しており、既存の条例等の見直しにつきましては、今後の議論の結果に基づき対応して参ります。
 次に、同じく2点目、最高規範と称するのは誤解を招かないかについてですが、本市の条例の中での最高規範を理念としてうたったものでありますことから、誤解を招くことはないと認識しておりますので、御理解を賜りたいと存じます。
 次に、同じくイ 定義についてですが、本条例上での市民の定義はどこまでを定義するかについてこれからも慎重に議論が重ねられると思われますが、他の自治体の最近の状況を見ますと、幅広くとらえる傾向にあるようであります。
 次に、同じく(2)のア 市民の権利についてですが、議員御指摘の理不尽な要求等につきましては、権利ではなくエゴイズム、利己主義と認識いたしておりますことから、本条例における市民の権利には、そのような権利を認めることは想定しておりませんので、御理解を賜りたいと存じます。
 次に、同じくイ 市民参加についてですが、これまでに本市では審議会委員の公募やパブリックコメント、市長への手紙などを活用して市民の意見を幅広く吸い上げる努力をして参りました。本条例では、さらに議員御指摘のような市民の方々にも、あらゆる手段を活用して御意見がいただけるような仕組みづくりをまさに目指していると考えております。
 次に、同じくウ 住民投票についてですが、住民投票制度の仕組みをどのようにするかまだ明確になっておらず、これから議論を重ねていくものと考えております。議員御指摘の点につきましては、まさに今後大きな論点となると認識いたしているところでございます。
 次に、同じく(3) コンプライアンス・倫理についてですが、ここで規定を考えている市政オンブズマンは第三者的救済機関としてのオンブズマン制度であり、市政に関する苦情申し立てを公正・中立に調査し、簡易・迅速に処理するとともに、市政を監視し、ただすべきところがあれば市に勧告をしたりするような機関を想定しているもので、議員御指摘の権限の制限になるようなものではないと認識しております。しかしながら、この制度につきましても、今後議論を重ねるものと存じております。
 次に、(4) 条例の運用について、一定期間後に条例を見直すことについてですが、議員御提案の趣旨は非常に重要な観点であります。今後の検討の中でも、こういった点を踏まえた上で議論がなされるものと存じております。
 以上でございます。